製造業
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ブローカーはつらいよ

あの会社は、いくらでモノを造ってくれるのか。自前の設備を持っていないブローカーにとっては、製造現場との関係が生命線。しかも価格ありきの売先が多い。もらった見積価格に自分のマージンを乗せて、売先へ見積書を出す。通るだろうか。しかも売先はさらに、自社の取り分をきっちり乗せて、お客さんへ見積書を提出する。もう少しマージンを下げるか。行き詰まり感が強くなってきている。こんなブローカーでも、頼りにしてくれる製造会社は少なくないが、将来どうする。

ぎょい御意とは言わず

1000分の1mm。売先の求める精度よりも、自社の設備の精度が劣る。求める精度に意味があるのか。単に設計者のこだわりか。今の製造現場に求められるハードルはかなり高い。検収に内視鏡を使ったり、メッキの厚みを測定したり、真面目にキッチリという日本的な空気の中でモノが造られるのは、歓迎すべきであるが。ひょっとして購買担当は、口と違うことを顔で言っているのか。「検収はしないので、造ると言ってくれ。性能面の問題はない。」そうかもしれないが、「ぎょい御意」とは言わず、「うちじゃできません」と言うのが日本の製造現場。

ブローカー頼みもつらいよ

モノを造ることに徹してきた。たいした営業努力はしてきていない。売先の顔は昔からいくつも変わったが、幸いにも工場は維持できている。今更営業は。そもそもどこへ行けばいいのか。ブローカーさんの持込仕事は、安価で儲からないが、機械が遊んでいるよりは良いか。娘婿がサラリーマンを辞めて、この前から工場に入っている。仕事を覚えるまで何年もかかるだろう。今はブローカーと継続してつきあうことは悪くはない。むしろ感謝。しかし将来はどうする。

設備投資

会社にとって設備投資はビッグイベント。2千万円の機械を買ったら5年でいくら儲かる、といったことまでは考える余裕はない。仕事が続く保証もないので、考える意味もない。特定の売先用の専用設備ではなく、汎用設備なのでなんとかなるか。銀行借入も、昔と違ってかなりし易くなったので、資金繰りも立つだろう。今は生産能力をおとさずに、モノを造り続けないと。しかし、機械の値段は下がらない。おまけに納品までに時間がかかる。

設備投資

古い機械の修理頻度が高くなると、買換えを考えます。このとき会社が進んでいく方向が見えていると、更新しなくてもいい設備とすべき設備の峻別ができて合理的です。更新しない分の予算を、挑戦的に新分野へ、ということもありうることです。会社の人材も有限のはずですから、人と設備を一緒に考慮していくと尚更合理的です。年齢構成とか現場の経験年数といったところが、会社の進むべき道を決するかもしれません。
万一、M&Aの買手側の話が舞い込んできたとしても、投資と人を一緒に考えるべき点は同じです。新事業を運営していくのは、人しかいないので。机の上に並べられた数字を眺めるだけでは、結果として高いお買い物になる可能性大です。

立ち位置

同業者から仕事が回ってくる。同業者には、自社より先に仕事の話が入ってくる理由がある。この会社には、技術、生産能力、歴史、信用、いろんなものが備わっていると思いましょう。自社との差は、現在では大きいです。自社がリストラして生産能力を落とした時期に、この会社はそれをせずに維持してきた。ひょっとしたら、差のきっかけはこれくらいのことだったのかもしれません。しかし、競争が一服して交通整理の出来た環境では、同じ土俵での立場の逆転は難しいでしょう。今は、粗加工とか粗仕事に徹しましょう。将来を見据えて踏ん張るのみですが、個性的な土俵を探していくと、次の世代の楽しみも出てくるでしょう。

事業承継

製造現場があるから仕事の話が来る。お客さんの難しいリクエストに応えていけるのも、できるできないの回答ができるのも、細かい微調整に対応していけるのも、製造現場があるからです。他社へ丸投げして、マージンをとる。材料代のサヤをとる。スポットの話としてはありえても、継続して商売として成り立つことを許すお客さんは少ないでしょう。事業承継には、現場を維持することが必要です。現場をリードできるくらいの経験があると、今の環境では比較的容易に事業承継可能です。